設立の趣旨

依存症を頂点としたアルコールの「有害な」使用
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こんなにある「アルコール関連問題」
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「薬物の有害さ」に関する分析
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アルコール飲料は、日本では「酒は百薬の長」「社会の潤滑油」「飲みニケーション」と言われ、さまざまな場面で活用されています。しかしその一方、飲酒に甘い社会の中で、アルコールの有害な使用が、多くの問題を招き悲劇を生じさせています。

身体的健康障害

過度の飲酒が招く肝臓病・すい臓病などの臓器障害、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、がん・脳卒中・急性アルコール中毒など致死的な疾患、酩酊に起因する外傷、胎児性アルコールスペクトラム障害など。

精神的健康障害

アルコール依存症、アルコールが関係する睡眠障害・うつ・自殺、認知症など。

社会問題・家庭問題

飲酒運転・DV・児童虐待・傷害などの犯罪、未成年飲酒、アルコールハラスメント(飲酒の強要)などの人権問題、家庭崩壊・失業・貧困など。

これらは、アルコールの薬物としての「依存性」「致酔性(中枢神経の抑制作用)」「臓器毒性」「催奇性」などによってもたらされる「アルコール関連問題」です。その特徴は、飲酒者個人だけでなく、家族や周囲の人々、社会全体に深刻な影響をもたらすこと。この他者への有害性により、英国の薬物関連独立科学委員会では、20種の薬物のうちアルコールを最も有害な薬物としたほどです〔多面的基準判断分析総合有害得点:1位アルコール(72点)、2位ヘロイン(55点)、3位高純度コカイン(54点)〕。

2010年、WHOは第63回総会で、「世界でおよそ250万人がアルコールが原因で死亡しており、対策を怠れば事態はますます深刻化する」と、「アルコールの有害な使用を低減する世界戦略」を全会一致で採択しました。そして、「国が適切な行動をとれば、アルコールの有害な使用は低減できる」と10分野の対策メニューを示し、施策の推進と報告を義務づけました。今、世界の国々は、次々と対策を打ち出しています。

しかし、日本では対策がいっこうに進んでいません。
飲酒運転・うつ・自殺・震災後のストレス障害・DV・児童虐待・生活習慣病・認知症など、日本が現在直面している多くの重点課題にアルコールが深く関連しています。「アルコールの有害な使用の低減」に取り組むことは、これらの問題すべてを抑制し、ひいては医療費や社会的コストを低減することにつながるのです。
今、日本に必要なのが、以下の対策です。

  • アルコールの有害な使用と関連問題についての実態調査・研究
  • 国の対策のポリシーと効果的な施策の検討
  • 幅広い関係機関、関連省庁による情報の共有と連携
  • 予防・早期発見・介入から回復支援までの社会システムの整備
  • アルコール依存症の偏見是正

私たちは、多岐に渡るアルコール関連問題に対応するため、これらの問題に関わる人々の連携を全国レベル・地域レベルで強化するとともに、国のポリシーとなる「アルコール健康障害対策基本法」を推進していきます。

設立時の呼びかけ団体

設立時のアル法ネット幹事会

代表

  • 丸山勝也(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター名誉院長/内科医)

副代表

  • 猪野亜朗(東海北陸地区代表/精神科医)
  • 垣渕洋一(関東甲信越地区代表/精神科医)
  • 立木鐵太郎(全日本断酒連盟参与)

会計監事

  • 米山奈奈子(AKK代表/アディクション看護学会/秋田大学教授)
  • 稗田里香(日本医療社会福祉協会/日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会/東海大学講師)

事務局長

  • 今成知美(日本アルコール問題連絡協議会事務局/ASK代表)

事務局次長

  • 大槻 元(日本アルコール問題連絡協議会事務局/全日本断酒連盟事務局長)

幹事

  • 麻生克郎(国際情報担当/精神科医)
  • 齋藤利和(日本依存神経精神科学会理事長/日本アルコール・薬物医学会理事長/精神科医)
  • 坂本 隆(東北地区代表/精神科医)
  • 佐藤喜宣(日本アルコール問題連絡協議会会長/法医学)
  • 辻本士郎(関西地区代表/精神科医)
  • 樋口 進(日本アルコール関連問題学会理事長/精神科医)
  • 堀井茂男(中国・四国地区代表/精神科医)
  • 山村陽一(ASK飲酒運転対策特別委員会委員長/元JRバス関東会長)
  • 山家研司(北海道地区代表/精神科医)
  • 杠 岳文(九州・沖縄地区代表/精神科医)
  • 吉本 尚(日本プライマリ・ケア連合学会/総合診療医)

顧問

  • 大曽根寛(放送大学教授 福祉政策・社会保障法)

アル法ネット設立の経緯

2010年5月に決議されたWHO「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を受け、日本での対策推進を図るため、日本アルコール関連問題学会、日本アルコール・薬物医学会、日本アルコール精神医学会(現・日本依存神経精神科学会) の3学会は協働を開始しました。
まず、2011年1月に、わが国のアルコール関連問題の現状をまとめた「簡易版アルコール白書」を発行。続いて、震災直後の3月に、基本法についての「3学会合同構想委員会」を発足させました。

一方、全断連は2010年7月に日本アルコール関連問題学会からの要請を受け、同年8月、超党派の「アルコール問題議員連盟」(1987年に全日本断酒連盟の働きかけで発足した経緯がある)に基本法制定への取り組みを要請しました。これは震災で一時中断しましたが、後の2011年12月の議員連盟総会で基本法推進が決定されることとなりました。
さらに、ASKと全断連が事務局を務める「日本アルコール問題連絡協議会(ア連協)」でも、2010年9月に基本法の推進を決定し、関連団体に連携強化を呼びかけて国への要望を準備していましたが、震災が起き中断せざるをえなくなりました。

2012年1月、3学会と一体となったア連協(加盟15団体、3学会を含む)が、「アルコール関連問題基本法推進ネット(アル法ネット)」設立委員会を立ち上げ、広く賛同団体を募ることを決定しました。
3月、アル法ネット設立委員会は、議員連盟によるヒアリングに応じ、法案作成への具体的な交渉を開始しました。
5月31日、議員連盟の協力により、アル法ネットは参院議員会館で設立総会を行ない、正式発足に至りました。

2013年8月28日、総会にあたる幹事団体会議において、正式名称を「アル法ネット(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク)」とすることを決定。幹事の改選が行なわれました。

設立までの経緯年表


【2010年】
■5月 WHOが第63回総会で「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を決議。
■7月 日本アルコール関連問題学会が基本法制定推進を決議し、ASKと全日本断酒連盟に協力を要請。
■8月 全断連がアルコール問題議員連盟(会長・櫻井充参議院議員)に基本法への取り組みを要請。
■9月 ASKと全断連が事務局をつとめる日本アルコール問題連絡協議会(ア連協)が、基本法推進を決議。
■10月 日本アルコール・薬物医学会と日本アルコール精神医学会が基本法推進を決議し、3学会合同構想委員会へとつながる。
【2011年】
■1月 3学会が「簡易版アルコール白書」を発行。
■3月 3学会合同構想委員会発足。
――東日本大震災によりすべての活動が中断
■7月のアルコール関連問題学会、10月のアルコール・薬物医学会、精神医学会において、3学会合同構想委員会と全断連・ASKが討議し、活動の中核をア連協とすることで合意し、未加入だった、アルコール関連問題学会と精神医学会が同協議会に加盟する運びとなった。
■12月 全断連の働きかけにより、議員連盟の総会で、基本法制定推進が決議。
【2012年】
■1月 幅広い賛同を集めるため、ア連協が呼びかけ母体となり、「アルコール関連問題基本法推進ネット(アル法ネット)」をつくることを決定。 設立委員会が発足(設立委員長・丸山勝也)。
■3月 議員連盟総会で、アル法ネット設立委員会が基本法の必要性と構想を説明。
■5月 議員連盟三役による再度のヒアリング(議員連盟が参院法制局に法案の骨子作成を指示)。参議院議員会館で、アル法ネット設立総会を開催(5月31日)。設立時の賛同団体は164。