基本法ができたら何が変わるのか?

    2012年6月2日
    大曽根寛(放送大学教授)

基本法は理念法であり、プログラム法とも呼ばれる。対策への道筋をつける法律である。
基本法によって、国の理念が明文化されることは、大まかに言って以下の5つの効果を生む。日本には40以上の基本法があり、すべてを精査したわけではないので、あくまでも福祉政策・社会保障法を専門にしてきた私の経験値であることを前提に読んでいただきたい。

1.戦略を打ち立てることができる

国・自治体・専門機関・大学などさまざまな場所で、「対策5ヵ年計画」のようなものが策定されるようになる。もう一歩進むと、白書がつくられる。
調査・研究・開発が行われ、国際会議に出たり、日本で会議を開催したりというような交流も促進される。

2.最低基準がつくられる

こうしてはいけないとか、こうすべきとかの基準が示される。そこまで踏み込めなくても、基準の呼び水となるような前提は示される。
これによって、当事者や家族の保護が図れるだけでなく、国・自治体がなすべき施策の最小限が明確になるし、家庭・学校・職場等におけるルール形成が徹底されていく。

3.予算が確保しやすくなる

対策のための調査やその評価、モデル事業などに予算がつきやすくなる。また、省庁横断的な予算組みが可能になる。

4.関係者の協議の場が設定しやすくなる

対策を協議したり、進捗を管理、評価するために、国や自治体レベルで、審議会、推進会議、協議会などを設置することが可能になる。

5.関連する法令等を見直す機会になる

基本法の理念に基づき、対策を進めるうえで、関連する法令・通達・実務を見直す必要が出てきて、改定が行われていく(立法・行政への効果)。
場合によっては、裁判所における判決・決定・命令の規範的な根拠として用いられることもある(司法への効果)。
そのようなプロセスを経て、基本法の次の改正が準備される。